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「受診する判断基準は?手術を受けることに決めた理由は?」~アンケート調査から見える、鼠径部ヘルニアの患者さんの行動~

足の付け根が膨らむ「鼠径部ヘルニア」は、自然に治ることはないため手術が唯一の治療法です。手術するかどうかは、患者さんの症状(膨らみの程度、違和感・不快感や痛みの有無や強さなど)や生活状況を考慮して、患者さんと医師によって検討されます。

本記事では2024年9月に実施された一般向けの鼠径部ヘルニアのアンケート調査の結果から、実際に患者さんが受診する判断基準・受診していない理由、手術を受けることに決めた理由・手術を受けることを見送っている理由等を紹介します。

監修:帝京大学医学部附属病院 外科学講座 教授
日本ヘルニア学会 理事
三澤健之先生

症状があって受診した患者さんは約3割。受診していない人の理由は?

アンケート調査によると、「鼠径部に何らかの症状がある」と回答した人のうち、医療機関を受診した人の割合は31.0%にとどまりました(図1)。

図1

受診の有無(対象:症状のある人)

 クリニックもしくは病院へ行った
 クリニックもしくは病院へ行っていない

症状があっても受診していない人にその理由を尋ねた設問で、上位3つの回答は「痛みがない、気にならないから(59.4%)」「日常生活や仕事に支障がないから(41.4%)」「違和感・不快感がない、気にならないから(24.4%)」でした。

鼠径部に膨らみなどの症状はあっても、日常生活や仕事をする上で気にならない、支障がないから、受診していないという傾向がありました。

受診していない理由

受診する判断基準は?

(受診の有無は問わず)鼠径部に何らかの症状がある人に受診する判断基準を尋ねた設問では、「膨らみが目立ってきた時(46.0%)」「痛みが強くなってきた時(32.8%)」「違和感・不快感が強くなってきた時(30.3%)」が回答の上位3つとなりました。鼠径部の症状が無視できなくなった時、強くなってきた時に受診を検討する傾向がありました。

受診を検討する理由

ドクターからのコメント

症状があれば、一人で悩まず、後回しせずに、受診していただきたいです。鼠径部ヘルニアは症状の様子を見ていても改善することはありません。大抵の場合は徐々に悪化します。症状の悪化の程度には個人差がありますが、膨らみが大きくなったり、違和感・不快感や痛みが強くなったりします。ひどい場合は嵌頓状態になります。ただし、似たような症状を来す全く別の病気もあって、疾患によって対処方法が変わります。したがって、その症状が鼠径部ヘルニアであるか正しく診断がすることが重要であり、そのためには、まず受診していただきたいと思います。

手術を受けると決めた人は7割近く。決めた理由は?

アンケート調査によると、鼠径部ヘルニアと診断された患者さんのうち「手術をした」「手術をする予定」と回答した人は67.5%でした。

手術の実施有無

 手術をした
 手術をする予定
 手術はしない(経過観察)

手術を受けると決めた理由として最も多かった回答は「手術をしないと治らないから(64.2%)」でした。

手術を受けると決めた理由

手術を受けていない理由は?

鼠径部ヘルニアと診断されても手術を受けていない方にその理由を尋ねる設問で、上位3つの回答は「日常生活に支障がないから(38.5%)」「医師に勧められなかったから(28.2%)」「痛みが気にならないから(23.1%)」でした。受診していない理由と同様に、日常生活や仕事をする上で気にならない、支障がないから、手術を受けることを見送っている傾向がありました。そのほか医師の判断が影響を及ぼす傾向も見受けられました。

手術を受けていない理由

ドクターからのコメント

大前提として、鼠径部ヘルニアは自然に治ることはないため手術が唯一の治療法です。手術を決心した理由として「手術しないと治らないから」という回答が最も多かったのは、患者さんが医師と相談し、鼠径部ヘルニアについて理解が深まった結果であると思います。

ただし、鼠径部ヘルニアと診断されたからといって、すぐに手術を受けなければならないわけではありません。通常は緊急性が高くないため,手術は患者さんの生活や仕事のスケジュールに配慮しつつ医師と相談しながら決めていただきます。症状が悪化しないうちに、適切なタイミングで手術を受けていただきたいと思います。

手術を受けた患者さんの感想

アンケート調査では、手術した患者さんに術後の生活や気持ちの変化についても尋ねています(回答は自由記述)。

回答の中には、手術によって痛み・違和感や動き(腹部に力を入れる)の制限がなくなった、膨らみがなくなったことへの安堵感や精神的な負担の軽減を感じた、少しでも気になることがあるなら早めに受診や手術をして解決した方がすっきりすると思う、という意見がみられました。一方、術後に痛みや違和感が数日間残ったと答えた方もいました。

ドクターからのコメント

我慢せずにもっと早く手術を受ければ良かった、という声が大多数です。時々、手術部位に軽い違和感が残る、あるいは体を動かしたときに痛みを感じる、という患者さんがおられます。多くの場合、これは体内に入れたメッシュによるものですが、この程度の症状はしばらく続くものの、数カ月から数年のうちにほとんど気にならなくなります。多少の違和感を感じるというのは、いわゆる「古傷が痛む」というもので、メッシュがしっかりとヘルニアを抑えてくれている証拠、と考えてください。

※鼠径ヘルニアの患者さん調査(2024)

  • 問数:最大15問
  • 実施日時:2024年11月27日~2024年11月30日
  • 実施手法:インターネット調査
  • 調査機関:GMOリサーチ株式会社
  • 実施地域:全国
  • 本調査対象条件:以下条件にて対象者を抽出
     1)40歳から79歳までの男女(医療従事者を除く)
     2)「鼠径ヘルニア」の症状あり
  • サンプル数:1,320

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