鼠径部ヘルニアの日帰り手術
監修:みやざき外科・ヘルニアクリニック 院長 宮崎恭介 先生
日帰り手術について宮崎先生にインタビュー
このページでは、鼠径部ヘルニア治療の第一線で活躍し、本サイトの監修も務められているみやざき外科・ヘルニアクリニック 院長 宮崎恭介 先生に、日帰り手術についてインタビューしました。
日帰り手術が可能な理由とは
最近の鼠径部ヘルニア手術では、短時間(約60分程度)の手術時間で、日帰りできる手術が可能になっています。
治療内容について説明しますと、脱出した腸をお腹の中に戻して、さらに、筋肉と筋肉の隙間から出てくるヘルニア囊を戻します。そして、筋肉と筋肉の隙間(ヘルニア門)をメッシュのシートで塞ぐ手術をします。


昔は筋肉と筋肉を太い糸で縫い縮めていました。
そうすると元々離れている組織をぎゅっと縫い縮めるため、縫合部に無理がかかりまた裂けてしまいます。そして、そこからまた腹膜が飛び出てくるのです。いわゆる再発が起きるのです。

ですから、最近ではそういう事がないように、この穴(ヘルニア門)は無理に塞がないのです。穴は塞ぎませんが、穴の裏側にこういったメッシュのシートを入れてあげて穴を塞ぎます。
この方法ですと、手術後3日目ぐらいまでは動いたときに時に痛みがでますが、多くのみなさんは痛み止めの内服薬を服用することで、痛みは落ち着いています。しかし、どうしても痛いときは座薬の痛み止めを使って頂きますが、1本もしくは2本使う程度で済んでいます。手術時間も60分以内で、短時間で行うことができます。
みやざき外科・ヘルニアクリニックでは、手術が終わった後に早く帰れるように、軽い全身麻酔に局所麻酔、あるいは硬膜外麻酔といって背中に麻酔をする方法を併用して行っております。こういった麻酔をすることで、手術が終わってから、約2~4時間で立って歩けるようになります。
つまり、大きな痛みもなく、手術時間も短時間で済みますし、適切な麻酔を組み合わせることによって術後の回復が早く、その日のうちに帰れるということになります。
手術後、帰宅してからの生活
抜糸が必要ないように溶ける糸を使用し、傷口の表面は接着剤でとめますので、家に帰った後で消毒などする必要もありませんし、シャワーは当日から大丈夫です。手術したあと、3日経てばお風呂も普通に入れます。
自宅に帰った後に、家庭で消毒をしたり傷のガーゼの交換をしたりする必要は一切ない訳です。
手術が終わったら1週間から10日後に、またクリニックに来ていただいて傷のチェックをします。その後は、術後1ヶ月目に再度受診して頂き、問題なければ終了です。
手術後の合併症について
合併症(術後に起こりうる不具合)などが気になる方もいらっしゃるのではないかと思います。もちろん、出血や感染には十分に気をつけて治療を実施しますが、人によっては傷の周囲が少し紫色になったり、皮下出血をおこしたりする場合があります。
このような皮下出血になっても、痛みはあまりありませんし、大体1ヶ月ぐらいすると自然に消えてくるので心配はありません。自然に吸収されて消えていきますので、特別な処置をする必要はない場合がほとんどです。

この方は手術の傷口の下がやや腫れぼったくなっているのが分かりますか。これが術後1週間から10日におこる漿液腫(しょうえきしゅ)貯留という水が溜まる合併症のひとつです。このようになる場合は、大体50人に1人ぐらいです(約2%)。

このような漿液腫の貯留が起こった場合も、ある程度は自然に吸収されて軽快していきます。当院では、どうしても軽快しない場合に、術後3週間以上経ってから、膨らみの部分に針を刺して水を抜く処置を行います。多くの場合は、1〜2回の針刺し処置で軽快しますので、こちらも特に問題はありません。
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