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手術から日常生活復帰まで

監修:立川綜合病院 外科 蛭川浩史 先生

手術を決め、手術をうけ、術後回復するまでの流れについて、説明します。

手術を決めたら

医師の問診

手術を決めた後は、手術のための検査が必要になります。検査は主に、患者さんの合併疾患や、手術の麻酔方法によって決まります。

局所麻酔の場合は、血液検査、心電図、胸部レントゲン写真などが主な検査です。全身麻酔の場合は、これらの検査以外に、尿検査、呼吸機能検査が追加されます。

合併疾患をお持ちの方は、その病状を検査する必要があります。合併疾患の治療を受けている科の医師の診察を受けていただかなければならない事もあります。

手術で問題となる疾患には、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、動脈瘤、弁膜症、心筋症、心不全、深部静脈血栓症、脳梗塞・脳出血などの心血管系疾患、消化性潰瘍、肝炎、肝硬変、などの消化器疾患、喘息、COPD、肺気腫などの呼吸器疾患、透析、糖尿病、他の悪性腫瘍の治療中…などなど、多種に及びます。

合併疾患の病状が安定していない場合は、手術を延期する場合があります。

高齢の方では、特に合併疾患をお持ちでなくても、心機能を精査するため、心エコーを行う事があります。

入院について

鼠径部ヘルニア治療は、欧米では日帰り手術が主流です。我が国ではまだ、日帰り手術は一般的ではありません。

入院期間によって主なものをあげるとすれば、

1)日帰り手術、あるいは、1泊2日
2)2泊3日

などがあげられます。

1)日帰り手術について

日帰り手術とは、狭義には、手術をしてその日の内に帰宅する方法を指していました。

現在は、広義に短期滞在手術とも呼ばれ、手術をしてその後病院に1泊し、翌日帰宅する(厳密には24時間以内に)方法も、日帰り手術とされています。

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2)2泊3日について

前日に入院し、翌日手術を行い、術後1泊経過観察を行う方法です。遠方の方で手術が朝早い時間に始まる場合や、手術前の準備が不安な方では、前日に入院していただきます。

手術当日から、術後までの流れは、同じです。

翌日に、傷が痛くてだめ、と言う場合、遠方で迎えに来ることが困難、と言うような場合は、さらに入院を延長する事があります。

手術後の経過、復帰

退院後の経過、日常生活

日常生活

術後の生活復帰に関しては、様々な報告が見られますが、どれも経験から延べられている場合が多く、信頼のおけるデータとは言えません。

ヘルニア診療のエキスパートの中でも意見は一致していません。術後早期に運動したからといって、再発を早めた、合併症を多くしたと言うデータはありません。

インターナショナルガイドラインでは、患者さん、痛みさえ問題なければ、一日も早く日常生活に戻るべきで、ほとんどの患者さんは、3~5日以内に日常生活に戻る事ができるとしています※1

※1 HerniaSurge Group. International guidelines for groin hernia management. Hernia 22: 1-165, 2018

多くの場合は、次のように考えられています。

1. 手術直後から数日

術後の痛みは、鼠径部切開法でも腹腔鏡の場合でも、数日は強い痛みがあります。

痛みの感じ方は、人それぞれですが、大体2-3日で改善してきます。人によっては1週間くらい痛い方もいます。それまでは、十分に痛み止めを使い、痛みをとり、安静にしてください。

術後、3-4日程度は、いろいろな予定は立てない方がよいと思います。できるだけ安静にし、痛みを和らげるようにしましょう。

2. 手術後1~3週間

術後1-2週間は、仕事復帰が可能です。ただし、デスクワーク、歩行や階段の上り下り程度までです。階段を駆け上がったり、一段抜かしで飛び降りたりなどの早い運動は避けた方が良いです。

多くの報告では、術後3週間を越えた場合、手術部位に痛みもなく、傷の状態も良好であれば、重いものを持ったり、走ったり、重労働に従事したりすることも可能とされています。

慎重な報告では、日常生活への完全な回復には、約6週間かかるという報告もあります。

3. 手術後3週間以後

鼠径部に力のかかる運動や、筋トレなどは、3週間以上経過してからはじめるのが良いと思います。

激しい運動に関して

激しい運動に関する論文としては、スポーツ選手が発症するスポーツヘルニアに関するレヴュー※2があります。このレヴューでは、歩行はすぐに再開できますが、ジョギングやランニング程度の軽い運動は術後3~4週間後から、全力疾走は、3週を過ぎてから、そしてランナーは2~4ヶ月以内に完全復帰できるとされています。腹腔鏡の手術後では、これよりも6-8週、回復が早いと述べられています。

概して、鼠径部ヘルニア術後の完全な回復まで、鼠径部切開法後では17.7週かかり、腹腔鏡手術後では6.1週かかる、と述べられています。

※2 Caudill P, Nyland J, Smith C, Yerasimides J, Lach J.
Sports hernias : a systematic literature review. Br. J. Sports Med. 2008;42 ( 12 ) : 954-964

術後経過観察

日帰り手術後、あるいは退院後、1~2週間後に外来を受診していただきます。ここで、傷の状態や体の状態、痛みなどをチェックします。

問題がなければ、3~4ヶ月後の診察を行います。さらに、経過観察を続けるかどうかは施設によって、外科医の考え方によって異なります。

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